白木顧問連載コラム:長期熟成酒の歩みと将来について(全8回)

第3回:熟成の開始(1)

合資会社白木恒助商店会長・長期熟成酒研究会顧問 白木善次

前述のような思考を経て、実際に製造にとりかかったのは、昭和40年代の中頃からですが私の小さな会社の実力から云って、兎に角その時点でできることから開始いたしました。

一つのタイプのものを仕込み、製造しその熟成の経過を見届けるという、息の長い仕事でありますから、一つのタイプを見届けてから次にとりかゝるというのでは時間が足りません。そこで数年間のうちに、吟醸、普通純米、アル添酒、のそれぞれ甘口、辛口タイプ等を造りました。その際、私が決めた基本は、吟醸酒を除いて、原料米は一般食用米、精米歩合70~75%、協会7号酵母、速醸、通常火入殺菌、タンク常温貯蔵、炭素不使用ということでした。

当時の杜氏さんは新潟の頚城村の杜氏集団の一人で外池さんという人でしたが、ずっと速醸系の酒母造りをして来た人であり、その頃の酒質の流れからも、生もと系の酒質に挑戦するということは不安材料でありましたので、そこに帰着したのだと思います。原料米を一般食用米としたことは、極めて当たり前のことであり、地方の酒蔵が、近所の田で取れた米を原料として来たことは歴史的な流れであったからであります。その他、精米歩合、火入温度、タンク常温貯蔵などは、スタンダードの処理をしたといえますが、上槽後の炭素処理を避けたのは、そのことにより、酒がいわゆるきれいになり平均的なものになってしまい、この施行に対してマイナスになるのであろうと考えたからです。折角特徴のある酒質を時間をかけて試すということをするには、余計な処理をしない方が良いと考えたわけであります。そんな中で私が、期待していたことは、自分の納得の行く、特徴のある「My古酒」の出現ということでありました。