白木顧問連載コラム:長期熟成酒の歩みと将来について(全8回)

第8回:熟成酒雑感

合資会社白木恒助商店会長・長期熟成酒研究会顧問 白木善次

とりとめもなく述べて来ましたが、少し補足させていただきます。熟成酒を造ってきて、まず思いますことは、そこから生ずる意外性ということであります。生じて来る色、香り、味、又、反対に消えて行くものもあります。

酸化等により、それらの成分が変化してしまったのか、又は発生した香味によりマスキングされてしまったのか、判断の及ぶところではありません。

そのあたりのことについて、一つ典型的なことを記憶しています。昭和57年醸造の酒で社内比較では淡れいタイプのもので、ワインの香りの表現で用いられる干しわら臭といわれるものが強く出たことがあります。外部からの来客の皆様からも同じ様なコメントが出されておりました。何故この様な香りが出たのかということについては思い当たることはありませんでしたので、それはブレンド要因の外に置いていました。数年を経て、改めて利き酒をしてみますと、その異質としていた香りについての難点はなくなり、ブレンド要員として使用できるという判断をしました。いずれにしましても、従来の一般的な活性炭処理による酒質の調整等という考え方からは、全く別の判断力でその変化に対応しなければならないということであります。

今から約十年程前、フランスのロマネコンティのワイナリーを訪れる機会に恵まれました。その折、当時の代表者でありましたオーベルド・ビレーヌ氏は、その場内をすべて見学させて頂いた後、地下の貯蔵庫で一本の壜詰品を出されて言われました。「このワインは本来、こういう熟成の仕方はしないのですが」と前置きして、その場で開栓してグラスに注いで頂きました。多分それは思いもかけない良い変化をしたということを我々に示されたことだと思いました。

試飲させて頂いたそれについて、ワイン音痴の私は、それを判断することが出来ず、感想を述べることは出来ませんでした。しかし、そこで長い歴史のある名門のトップが熟成のもたらす意外性を言われたことは、私の感じてきたことが、極く当たり前の現象であるということを裏付けて頂いたことになりました。日本人の味覚から百年以上途絶えた熟成古酒のほんの一端に取り付いた私の挑戦であります。

多くの応援を頂いていますが、商いとしては、未だ道半ばというところであります。皆様方ご助言をいただければと存じています。