白木顧問連載コラム:長期熟成酒の歩みと将来について(全8回)

第5回:熟成の開始(3)

合資会社白木恒助商店会長・長期熟成酒研究会顧問 白木善次

吟醸系などのそれは色調は淡色であり、濃厚なタイプのものは褐色から黒色に近いものであります。このオリが沈降して上澄み部分(タンクの上呑部分以上)が非常に透明度がよくなった上に輝きのある「テリ」が見られる状態になった時に明らかに酒の香味に変化が生ずるということであります。

概略して云えば、香りはヒネ香と思われるものを脱し、味の感覚も従来の清酒から一歩脱したものへと変化する見極めのポイントといえると思います。

このポイントに至るまでの時間(年数)については極端に内容成分の多いものについては明らかな判断がつきにくいのですが、日本酒度でマイナス10度ぐらいまでの私見での食中酒としてのジャンルに属する様な酒質のものでは、十年以内、凡そ7、8年あたりにあるのではないかという思いがあります。

次に思い当たったことは、ある程度の熟成酒の備蓄も進んで商品化を始めた頃の事でありますが、一つの商品を発売した後、リピーターのお客様に対しては、小さいブレの内で安定的にお届けすることが、メーカーとして当然の責務でありますから、微修正を行う為の酒質の貯えが必要だということになりました。

例えば「ダルマ正宗 五年古酒」「同十年古酒」(いずれもブレンド酒)の場合、手持の酒について、例えば香りについても甘みについても一定のレベルに達しているものゝ、どうしてももう少し酸味が必要であるということが生じてきました。そんなことから、ブレンド用の番外酒とも云うべき酒質のものを造ることが必要だということとなり、酸の多い酒質のものも造りました。

この様に、ヴィンテージの商品でなく、ブレンドによる継続性のある香味の商品提供をする為に、個性のある酒の大切さということも判ってきました。