本郷顧問連載コラム:Vintage Sake (全33回)

第16回:熟成古酒きき酒認定制度

長期熟成酒研究会顧問 本郷信郎

本郷先生近影酒メーカーで構成する「長期熟成酒研究会」と、流通を担う酒販店を主体に消費者も参加する「長期熟成清酒勉強グループ」が連携し、「長期熟成酒きき酒認定制度」がつくられている。

平成9(1997)年、最初に認定者があり、現在(2009.7.13時点)、初段19人、2段4人、3段6人が認定され、認定証第1号は小田急百貨店に勤める今泉礼子さん。第2号は酒販店及び熟成酒屋「花」のオーナー、伊藤淳さんである。

市中に流通する熟成古酒のアイテム数がまだ少ない現在、「きき酒認定制度」に接する機会として、この二つの会が開催する勉強会が挙げられる。認定者はまだ僅かで貴重な存在であり、ワインを知る人が多く興味を持つ傾向にある。

きき酒に堪能な方の中でも、比較的香りに敏感な方、酸に強い方、甘味に強い方などそれぞれ特徴を持っており、自らの特徴をつかんでおくことが大切である。一般の清酒より副産物の多い熟成古酒を「きき分ける」ことは、より強い能力が求められるが、まず数多くの熟成古酒をきくことが大切である。

利き酒制度認定書きき酒認定制度は、出来るだけ多くの酒を体験することが第一と考え、きき酒した数を認定することで、きき酒の習熟度を段階的に証明することを目的としている。

「段」「級」とがあり、3級はきき酒点数が100点、2級は200点、1級は250点。また、初段300点、2段500点、3段800点となっている。3級~3段までは会員外でも取得可能。高段位の4段、5段は会員のみの資格取得となり、講師の資格を持ち、理論、自己きき酒判定、実学、リポート提出などの研修がある。

もっと盛んに熟成古酒をめでる時代はすぐそこまで来ている。急展開の一歩手前の状況。そうなれば、熟成古酒はもちろん不足することになる。出来上がった酒を判定するきき酒資格者も不足する。

造られた熟成古酒の基礎となった酒の良否、出来上がった酒の将来の可能性についての判定、さらにはワインのような将来の投資物資としての見通しなど、認定能力が高く評価される時代が待っている。

熟成古酒のきき酒はその酒の“解脱”までの時間を予測できることが第一歩である。一つの酒を追うと熟成が進む酒は舌の上に薄い膜を感じさせ、年々その厚さが薄くなり、“ゼロ”の年が近づき、そこにあっと思う酒の調和と風格が生まれる。それが“解脱”の年である。解脱後も熟成は続き、その後は詰められた瓶一本一本の調和、風格が異なる状況が出てくる。

元禄2(1689)年の酒に大正12(1923)や昭和元(1926)年の酒、そして昭和16(1941)年の酒―。いずれの酒もきいてみたが、すべてのど越しはスッキリしている。

次回は熟マークシールについて説明したいと思う。

(Kyodo Weekly 2009.7.13号掲載)